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~低温作動型のSOFCや酸素センサーに最適~

高イオン伝導性結晶配向セラミックスの開発

技術分野分類:5902 無機材料・物性
産業分類:電気業,窯業・土石製品製造業
技術キーワード:イオン伝導体,結晶構造・組織制御,エネルギー変換,無機材料創成・合成プロセス,低炭素社会
工学
材料工学
福田功一郎(物質工学専攻)
技術概要
我々は反応拡散を利用した独自の結晶配向技術を用いることで、多結晶体ケイ酸ランタン電解質のイオン伝導度を飛躍的に向上させることに成功した。
特徴
化学組成の異なる2種類のケイ酸ランタンの圧粉体をサンドイッチ状に重ね合わせ、空気中で加熱する方法を採用した。極めて簡便な方法でありながら、高い配向度(ロットゲーリングファクター0.9以上)を実現した。開発したc軸配向多結晶体は、550℃での酸化物イオン伝導度が0.031 S/cmであり、600℃では0.042 S/cmに達し、これらの値は、過去に作製したケイ酸ランタン結晶体の2倍以上の伝導度で、家庭用燃料電池用に実用化されているイットリア安定化ジルコニア電解質より高い。
背景・従来技術
アパタイト型ケイ酸ランタンは、化学的安定性に優れ、電子伝導性が無いなど、理想的な低温動作型SOFC電解質であるが、伝導経路がc軸方向に限定されるため、ランダム配向多結晶体では高い酸化物イオン伝導性が得られなかった。
実用化イメージ
燃料電池を600℃以下で作動できれば、周辺部材をステンレス等で代用でき、大幅なコスト低減に繋がる。さらに装置の起動終了を繰り返す電池セルの熱応力による劣化も低減できる。

 

結晶配向電解質の写真。光学的一軸性結晶が垂直に集合して透光性が発現。

結晶配向電解質を構成する結晶の原子配列。空間群はP63/m。

結晶配向電解質と関連化合物の酸化物イオン伝導度の比較。

企業への提案

研究者から企業へのメッセージ
当研究室は独自開発のプロセス技術を駆使して、特異な結晶配向セラミックスを作製しています。さらにX線(単結晶と粉末回折法)を用いた精密構造解析や電子線を用いた組織解析、局所分析にも習熟しています。

文献・特許
・”Oxide-Ion Conductivity of Highly c-Axis-Oriented Apatite-Type Lanthanum Silicate Polycrystal Formed by Reactive Diffusion between La2SiO5 and La2Si2O7“, Chem. Mater., 23, 5474 (2011).
・”Crystal Structure and Oxide-Ion Conductivity along c-Axis of Si-Deficient Apatite-Type Lanthanum Silicate” ,Chem. Mater., 25, 2154 (2013).

試作品状況 無し 掲示可 提供可

 

利用可能な設備・装置 共同研究を希望するテーマ
600℃以下で作動するSOFC単セルの開発
300℃以下で作動する酸素センサーの開発
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研究者名:福田功一郎
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