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~僅かな環境変化で開閉する分子ゲート~

副作用の少ない薬物徐放担体の構築

研究分野分類:5303 高分子化学
産業分類:化学工業,保健衛生
キーワード:自己組織化高分子,分子素子,ナノ表面・界面,ナノ結晶材料・コンポジット,ナノ機能材料
化学
複合化学
樋口真弘(物質工学専攻)
研究概要
 当研究室では、副作用の少ない薬物除放担体の構築に取り組んでいます。本研究は、がん細胞が他の正常細胞と比較して、その周辺のpHが酸性に傾いていることを利用して、がん細胞の近傍でのみ薬物を除放出する分子ゲートを持つ薬物除放出担体の構築を目的としたものです。
特徴
 私たちの新しい薬物担体は、ナノサイズの”孔”を多数もつシリカ粒子の表面を覆うように規則正しく並んだ分子で”蓋”をします。この分子は、僅かなpHの変化を見極め、その形が変化して、覆っていた”孔”を開放し、”孔”に閉じ込められていた薬物が放出します。つまり、”孔”を覆っている分子は僅かなpH変化に応答する分子ゲートとして働きます。
背景・従来技術
 これまでの抗がん剤を用いた治療では、強い副作用があり、使用する薬物が限られていました。患部のみで薬物を放出することが可能な、つまり、僅かな環境変化を認識して、薬物の放出量が制御できれば、これまで使用できなかった薬物の使用も可能となります。
実用化イメージ
 この薬物除放単体を用いると、がん細胞の周りだけで抗がん剤を放出して、正常な細胞は傷つけない、微小環境変化に応答した薬物除放出が可能となります。


僅かなpH変化に応答して薬物を放出する徐放担体構築の模式図とその薬物徐放の機構。塩基性条件下(pH8)では、表面のペプチド分子が分子間水素結合により、シート状の構造を形成し孔を塞ぐ。逆に、酸性(pH6)では、表面ペプチドの分子形態が変化して孔を開放し、担持されてた薬物が
放出される。


周期的に薬物徐放担体周囲のpHを塩基性(pH8)、酸性(pH6)と変化させた際の、薬物放出量。酸性で、大きな薬物の放出が認められ、可逆的に薬物の放出とその抑制が起こることが分かる。


企業等への提案

研究者からのメッセージ
 樋口研究室では、分子の自己組織化を用いて形成したナノ構造体を用いて、各種機能性材料の構築を目的に研究しています。

文献・特許
・“Design of the nanocarrier having the regulated drug release ability utilizing a reversible conformational transition of peptide responded to slight pH changes”, K. Murai, M. Higuchi, T. Kinoshita, and K. Kato, Phys. Chem. Chem. Phys, 15(27), 11454-11460 (2013).

試作品状況 無し 掲示可 提供可

 

利用可能な設備・装置 共同研究を希望するテーマ
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研究者名:樋口真弘
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