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~フッ素がつくる新しい機能性色素~

含フッ素フタロシアニンの合成

研究分野分類:5302 合成化学
産業分類:化学工業,学術・開発研究機関
キーワード:有機合成化学,機能材料,エネルギー変換,有機フッ素化学
化学
複合化学
柴田哲男(未来材料創成工学専攻)
研究概要
 フタロシアニンは人体に無毒で非常に安定な有機物であり、優れた物理的性質を有することから、機能性色素として注目されてきました。当研究室では、フタロシアニンにフッ素原子を導入することにより光化学的性質または物理的性質を制御し、新規の機能性分子材料の設計と合成を行っています。
特徴
 フタロシアニンのスタッキングによる凝集を防ぐため、当研究室では、これまでにフッ素の撥水撥油性を利用した非凝集性トリフルオロエトキシ化フタロシアニンを開発しています。特筆すべきは、いかなる条件下でも全く凝集挙動を示さないという点です。
背景・従来技術
 フタロシアニンは分子間相互作用により凝集しやすいという性質があります。フタロシアニンは凝集体を形成すると、モノマーで得られていた電子的な構造が変化し、光学的な変性や触媒作用の失活が見られます。非凝集体フタロシアニンを得るために様々な工夫がなされているものの、ほとんどが嵩高い置換基を環に導入して「物理的に」凝集を防いでいます。
実用化イメージ
 触媒や光学材料、電荷発生剤などに実用化されており、さらには「化学」という枠組みを超え、光線力学的治療薬や太陽電池などへの応用が期待されています。

 
トリフルオロエトキシ化フタロシアニンは撥水撥油効果(fluorophobic repulsion)により有機分子は全く寄せ付けない一方、分子内においてはフルオロ基間で分子の嵩高さを凌駕して互いに近づこうとする性質(fluorophilic attraction)をもつ。

企業等への提案

研究者から企業へのメッセージ
 柴田研究室では有機フッ素化合物の合成の研究を行っています。医農薬品や機能性材料(フタロシアニン)、サリドマイドなど幅広く研究をしています。フッ素のことやフッ素化合物に関することは何でもご相談ください。

文献・特許
・Yoshiyama, H.; Shibata, N.; Sato, T.; Nakamura, S.; Toru, T. Chem. Commun., 2008, 1977.
・Yoshiyama, H.; Shibata, N.; Sato, T.; Nakamura, S.; Toru, T. Org. Biomol. Chem. 2009, 7, 2265.
・Das, B.; Umeda, M.; Tokunaga, E.; Toru, T.; Shibata, N. Chem. Lett. 2010, 39, 337.
・Reddy, M., R.; Shibata, N.; Kondo, Y.; Nakamura, N. Toru, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 8163.
・Yoshiyama, H.; Shibata, N.; Sato, T.; Nakamura, S.; Toru, T. Org. Biomol. Chem., 2008, 6, 4498.

試作品状況 無し 掲示可 提供可

 

利用可能な設備・装置
NMR
HPLC
LCMS
GC
IR
共同研究を希望するテーマ
医農薬中間体の合成法の開発
合成プロセスの開発
新規医薬品候補化合物の合成
機能性材料の開発
環境にやさしい合成法の開発
不斉合成法の開発
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研究者名:柴田哲男
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